参考資料 土構造物の実務的な震性評価法

盛土・支持地盤の地震時残留変形

盛土・支持地盤の地震時残留変形は、以下のように考えるのが実務上合理的であると言えます。
残留変形=(すべりによる変形+地震慣性力による変形+剛性の低下による変形+過剰間隙水圧消散による変形) =(ニューマーク‐D法による変形+非線形準静的FEMによる変形+過剰間隙水圧消散による変形)

そこで、ここでは「SENPS」によるため池等の土構造物の地震時残留変形解析事例を紹介します。SENPS とは、Seismic Stability analysis of Earth structures by Newmark-D method and Non-linear Pseudo-Static FEM taking into account strength reduction by seismic loadingの頭文字を取ったものであり、地震荷重による土の強度低下を考慮したニューマーク‐D法と非線形準静的FEMおよび過剰間隙水圧消散による沈下を組み合わせた地震時安定解析プログラムです。

解析モデルおよび物性値

解析用いた物性値

解析結果

ニューマーク-D法による沈下量

ニューマーク-D法による解析結果(すべりによる変形)を表2.3-3に示す。本解析の例では、上流側で5.0㎝、下流側で6.8㎝の沈下量が発生している。最大沈下量は、下流側で発生しており、比較的6.8cmと比較的小さい解析結果となった。 付図2.3-9(a),(b)に上流側および下流側の円弧すべりの位置、臨界円弧すべり面(変形量が最大となる円弧すべり面)の位置、土塊すべりの平均応答加速度波形、地震後のひずみDAコンター、変形量時刻歴および変形図の詳細結果を示す。

ニューマーク-D法による沈下量

検討
ケース
円弧中心
Xc(m)
円弧中心
Yc(m)
半径
R(m)
土塊すべりの
最大応答
加速度(gal)
初期降伏
加速度(gal)
最終降伏
加速度(gal)
最小安全率Fs
(@時刻)
回転変異量
(m)
沈下量
(cm)
上流側 -10.0 37.5 18.5 532.9 674.4 327.7 0.713
(@38.92)
63.5 5.0
上流側 7.8 35.0 15.0 545.1 687.6 304.6 0.718
(@28.92)
85.8 6.8

準静的FEM変形解析結果

検討 沈下最大時刻(秒) 堤体上部中央での応答加速度(gal) 沈下量(cm)
準静的変形 38.93 548.0 10.5

過剰間隙水圧消散による沈下


上記3つの解析結果を合算すると、堤頂での総沈下量は21.6㎝となり、本堤体の許容沈下量を1.0mとすれば、レベル2地震動に対して耐震性能を有していると判断される。

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