SERID研究会について

ご挨拶

『SERID(セリッド)研究会』は、地震時のため池の新しい耐震診断手法の開発・普及を目的に、平成25年10月1日に設立され、詳細ニューマーク-D法および簡易ニューマーク-D法の解析プログラムであるPC版ソフトウェア「SERID」に関する研究活動を進めてまいりました。
 ため池の地震被害は、兵庫県南部地震(1995.1.17)で約1,200箇所、東北地方太平洋沖地震(2011.3.11)で約3,700箇所とされており、後者においてはため池堤体の決壊により下流域で甚大な人的被害が発生しました。
 これを機に、ため池の大規模地震(レベル2地震動)に対する安全性が着目され、平成27年5月に改訂された土地改良事業設計指針「ため池整備」では、「レベル2地震動を起こすような地震を考慮した土地改良施設の耐震・強化を推進する観点」での改訂が行われ、当研究会で検討を進めてまいりました合理的かつ短期間・経済的に耐震診断が可能な「ニューマーク-D法」が実務的なため池の耐震診断手法として取り上げられました。
研究会発足後、設立目的に沿って3 年半に亘って活動を続け、平成28 年度末をもって設立当初の目的をほぼ達成したことから、平成29 年度の総会にて研究会としての全体活動を一時的に停止することが可決され、その後は幹事会にてニューマーク-D法の普及活動などを中心に研究会を運営してまいりました。また全体活動の停止期間中は、内閣府の研究プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP1))レジリエントな防災・減災機能の強化(平成26~30年)」において、「SERID」の開発者の一人である(株)複合技術研究所が農研機構との共同研究に参画して、「ため池防災支援システム」の一機能である「サーバ版耐震診断システム」(概略条件での簡易ニューマーク-D法による解析システム)の開発を担いました。
本システムは、過去に全国で実施された詳細ニューマーク-D法の結果や、解析に用いた土質条件(強度低下特性、液状化特性等)のデータを、農研機構が収集し土質ごとにモデル化した強度低下モデルを、SERID研究会で開発した簡易ニューマーク-D法をソースとしたサーバ接続型の解析システムです。これにより各自治体はサーバに接続することで、対象ため池の簡易条件(簡易形状、土質試験結果等)を入力することにより、即時に対象ため池の耐震性を一次スクリーニングできるようになりました。

 全国16万6千箇所ものため池のうち、63,722箇所が「防災重点ため池」2)に指定されましたが、すべての防災重点ため池を詳細な耐震診断を行うことは、効率性・経済性の観点から現実的ではありません。膨大な数のため池の耐震診断・耐震設計を実現するには、1か所当たりに要する時間やコストを縮減すると共に、解析による結果の精度と安全度とのバランスが重要であり、その評価を適切に行える必要があります。本システムの位置付けは、時間・費用がかかる詳細な解析による耐震診断を実施すべきため池を絞り込み選定を行うことを目的としたものです。
「サーバ版耐震診断システム」による一次スクリーニングの実施により、耐震性を満足しないと判定された場合には、二次スクリーニングとして「簡易ニューマーク-D法」を実施し更に絞り込みを行ない、最終的に「詳細ニューマーク-D法」による耐震診断が必要なため池を合理的・効率的に選定できる耐震診断実施フローとすることで、より経済的で安全な結果を得ることが可能となります。
SERID研究会では、これら一連のため池等の土構造物の耐震評価プログラムが完成したことから、この新しい解析システムでの地震時斜面変位の予測手法の研究、解析結果の検証・照査を継続することの重要性および普及・広報活動等の必要性を目的に、令和元年11月26日に開催された幹事会におきまして、令和2年4月より研究会活動を再開することが決議されました。

 令和2年10月には、「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」4)が施行されました。これにより、防災重点農業用ため池の集中的かつ計画的な防災工事等が推進され、令和12年度末まで国は必要な財政上の措置及び地方債への特別な配慮をすることが規定されました。これにより、各都道府県でのAA種をはじめとする重要度の高いため池の耐震診断が活発化することが予想されます。
これからもSERID研究会はニューマーク-D法を基本として、ため池等の土構造物の地震時の挙動に則した耐震診断手法の更なる改善および普及を推進してまいります。具体的には、より多くのため池等の土構造物の耐震診断が可能な手法のさらなる研究開発、解析結果の精度向上を目的とした検証・照査および普及・PR活動等を実施していきたいと考えております。
 今後とも関係各位のご助言をいただきながら、益々の発展を期して、意義深い研究会活動を行って参りますので、皆さまのご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
SERID(セリッド))研究会 会長  柳浦 良行
基礎地盤コンサルタンツ株式会社 代表取締役社長
1)内閣府の研究プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(平成26~30年)」
2)農業・食品産業技術総合研究機構:ため池の耐震診断を低コスト・短期間で行える手法-本格的な詳細診断の要否を判断,プレスリリース,2019.12.19
3)応答特性は簡易的に応答分布モデルで求め、繰返し試験等は実施せず、標準強度低下モデルを用いて解析する方法
4)応答解析を実施して応答特性を求め、繰返し試験データに基づく物性値を用いて解析する方法
5)農林水産省HP:https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/bousai/190611.html

入会のご案内

chatはじめに

近年、大規模地震や集中豪雨によって日本各地に点在するため池が決壊し、下流域で人的災害を含む二次災害が発生しています。たとえば、地震災害に関しては2011年の東日本大震災では、約2,000個弱のため池が被災し、その被害総額は300億円以上にも及ぶものと想定されています。また、豪雨災害に関しては、2004年の台風23号により、兵庫県内では180か所以上のため池が決壊し、下流域では甚大な被害が発生しています。
このように広域多所に及ぶ連鎖的な被害に対して、農林水産省では地震に対して約12,000か所を『警戒ため池』に、豪雨に対しては5,700か所を『緊急な対応が必要なため池』としています。 東海・南海・東南海地震の発生や地球温暖化による集中豪雨による自然災害の危険性が増加しており、膨大な数のため池の安全対策が急務です。全国約21万箇所のため池のうち、江戸時代前に築造されたため池は約48,500箇所(農林水産省農村振興局)にも及び、築造年代が古く土質や内部構造が不明なため池に対して、簡易な調査法や耐震診断法が確立されていないのが現状です。

layers研究会設立の背景

膨大な数のため池堤体の安全性を診断する方法には、ため池1ヶ所当たりの診断にかかる時間とコストを縮減し、短期間で数多くのため池の安全性診断が可能な手法を開発する必要があります。

実務におけるため池堤体の地震時安全性診断の方法としては、従来、すべりによる斜面安定解析法が用いられてきました。この方法は、極限つり合い法により所定の設計水平震度に対して求めたすべり安全率が所定の値(たとえば1.2)以上であることを確認する方法で実施されてきました。
しかしながら、近年、地震時に発生する過剰間隙水圧を推定して極限つり合い法ですべり安全率を求める手法や地震による非排水・繰返し載荷によって低下した剛性を用いて有限要素法による地震時残留変形量を求める手法等も実務でも採用されるようになってきています。

さらには、砂の構成式を用いた非線形動的有効応力解析法が開発され、実プロジェクトにも適用されることも多くなってきていますが、大規模プロジェクト以外では、通常複雑すぎる上に、ひずみの局所化とそれに伴うひずみ軟化を考慮した地震時すべり変形解析を行うことは容易ではありません。

一方、斜面の地震時残留変位の簡易算定法として広く知られているニューマーク法を用いる方法では、ひずみ軟化を考慮して排水条件での地震時残留すべり変位を算定する方法は既に実用化されています。
しかしながら、地震時の土のせん断強度は、非排水繰返し載荷による損傷に加え、ひずみ軟化による強度低下が生じることが指摘されており、これら強度低下を考慮するには、原位置から採取した試料を用いての非排水繰返し試験結果から求まる疲労曲線、累積ひずみ過程での強度低下モデル、および、すべり変位に伴う強度低下モデル等の関係が重要になります。

label目的

以上の背景のもと、東京理科大学・龍岡文夫教授、独立行政法人・農村工学研究所、および(株)複合技術研究所を中心に、産官学の連合体形式で、土のせん断強度に及ぼす地震時の累積損傷度やひずみ軟化を考慮した新しいニューマーク法による地震時斜面変位の予測手法を開発いたしました。
本研究会は、上記新しいニューマーク法(以下、「ニューマーク-D法」と称す)による地震時斜面変位の予測手法の普及を目的に設立され、その主な目的は下記の通りです。

1 実務に適する「ニューマーク-D法」等による地震時斜面変位の予測手法の研究・改良および機能向上活動
2 「ニューマーク-D法」等による地震時斜面変位の予測手法の普及および広報活動
3 本予測手法による解析結果の検証・照査
4 地震時斜面変位の予測手法の精度向上
5 土の地震時せん断強度特性に関するデータ収集および劣化モデルの提案
6 ため池に対する安価な補強対策工法の提案(標準案の作成)

group
会員について

本研究会の設立目的に賛同する企業および団体、研究者

種別 幹事 / 正会員
権利別 本研究会の会員は、本研究会から本手法に関する技術資料の提供、並びに教育・指導を受ける権利を有します。また、本研究会の会員が本手法に関する予測プログラムの購入を希望する場合は、(株)複合技術研究所から有償にて提供される権利を有します。

work研究会の主な活動

  • ① 実務に適するニューマーク法による地震時斜面変位の予測手法の確立
  • ② 非排水繰返し試験結果に基づく疲労曲線データの収集
  • ③ 各種地盤種別による累積ひずみ過程での標準強度低下モデルの作成
  • ④ すべり変位に伴う標準強度低下モデルの作成
  • ⑤ 地震時斜面変位の予測手法の精度向上
  • ⑥ 大規模地震・豪雨に対するため池堤体の簡易な耐震診断法の開発
  • ⑦ 安価なため池堤体の補強工法(減災対策)の提案
  • ⑧ 上記①~⑦の普及および広報活動

◎組織図

info
事務局
研究会事務局 〒160-0004
東京都新宿区四谷一丁目23番地6号
協立四谷ビル5階 (株)複合技術研究所内
TEL:03-5368-4104
FAX:03-5368-4105
E-mail:serid@igi.co.jp

会員情報

幹事会メンバー

NTCコンサルタンツ(株) 〒460-0003 名古屋市中区錦2丁目4−15
TEL:052-229-1701
基礎地盤コンサルタンツ(株) 〒136-8577 東京都江東区亀戸1-5-7 日鐵NDタワー12階
TEL:03-6861-8800
(株)三祐コンサルタンツ 〒461-0002 名古屋市東区代官町35番16号(第一富士ビル)
TEL:052-933-7871
中央開発(株) 〒169-8612 東京都新宿区西早稲田3-13-5
TEL:03-3208-5251
内外エンジニアリング(株) 〒601-8213 京都市南区久世中久世町1丁目141番地 12
TEL:075-933-5111
日本工営(株) 〒102-8539 東京都千代田区麹町5-4
TEL:03-3238-8270
(株)複合技術研究所 〒160-0004 東京都新宿区四谷1-23-6 協立四谷ビル5階
TEL:03-5368-4101

会員一覧(幹事会メンバー会社を含む)

(株)ウエスコ
(株)エイト日本技術開発
(株)エーシーエンジニアリング
NTCコンサルタンツ(株)
応用技術(株)
応用地質(株)
(株)大江設計
(株)オリエンタルコンサルタンツ
(株)技術開発コンサルタント
基礎地盤コンサルタンツ(株)
キタイ設計(株)
協和調査設計(株)
(株)クレアテック
呉調査設計(株)
構営技術コンサルタント(株)
(株)国土開発センター
五大開発(株)
(株)三栄コンサルタント
サンスイコンサルタント(株)
(株)三祐コンサルタンツ
(株)CPC
大日コンサルタント(株)
(株)ダイム技術サービス
(株)日本インシーク
日本工営都市空間(株)
(株)チェリーコンサルタント
中央開発(株)
中央コンサルタンツ(株)
(株)テノックス
東邦技術(株)
内外エンジニアリング(株)
ニタコンサルタント(株)
(株)日設コンサルタント
日中コンサルタント(株)
日本工営(株)
パシフィックコンサルタンツ(株)
(株)パスコ
阪神測建(株)
(株)複合技術研究所
(株)復建技術コンサルタント
復建調査設計(株)
豊栄コンサルタント(株)
(株)ホープ設計
(株)ユニオン
(株)米北測量設計事務所
若鈴コンサルタンツ(株)
令和5年12月現在

supervised_user_circle入会のご案内

会則はこちらをご確認下さい 『SERID研究会』会則

【入会のお手続き】

申し込み書類 ①入会申込書
②添付書類:会社概要もしくは会社経歴書等
上記2点の書類を郵送にてご提出ください。
入会申込書ダウンロード 【幹事会承認後の手続】 幹事会で承認され入会が確定致しましたら、入会並びに振込手続をお願いすることとなります。

プログラムの購入について

プログラムの購入については、五大開発(株)へお問い合わせください。 五大開発(株) WEBサイト
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